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カオス(混沌)に生きる、自分自身の気持ちを慣らす。



成功や失敗の理由を断定的に結論として話す人は、世の中にはゴマンといる。

「これが勝因だった」「これが敗因となった」と。

就職活動においても、またしかり。

転職・再就職活動がなかなか思うようにいかないあなたのもとにも、忠告やアドバイス、指導の名目で、これまで幾度となく、就職支援会社などからさまざまなメッセージが届いたことだろう。

しかし、ここはちょっと考えてみたいところでもある。

それではその「勝因なるもの」がなければ、面接は失敗していたのだろうか?

その「敗因なるもの」が起こらないようにしていれば、転職は成功したのだろうか?




人はみな、自分が裁断者の立場にあるがごとく、第三者の身に起きているさまざまなことを「断定的」「確定的」に話す。

しかし言うまでもないことだが、話し手がいかに断定的な表現を使おうとも、その文体の隅々にまでいかに自信満々な態度があふれていようとも、しょせんは「ひとつの立場」「ひとつの見解」「ひとつの意見」に過ぎない。

世のオピニオンリーダーによる寄稿であろうとも、掲示板に匿名で投じられた一コメントであろうとも、その点において変わることはない。

私がいま書いているこの文章とて、もちろん例外ではない。

どれだけ書き手である私が自信と確信を持って書いたとしても、受け手のあなたからすれば、単なる一つの私的見解にすぎないわけだ。

誰かにとって貴重なメッセージを含んでいるかもしれないし、誰にとってもただのノイズにすぎないかもしれない。



転職活動でも面接でも、あなたがうまくいかなかった「本当の理由」なぞ、外から見ている人間がわかることは決してない。

ひょっとしたら、当事者のあなた自身でさえ、「あれだけいい雰囲気で最終面接までいったのに、なぜ不採用だったのだろう…」などといぶかったりして、不採用の理由が自分でもよくわからなかった(笑)ことが、おありじゃないですか。

たとえ何十年の経験を有する転職コンサルタントであろうとも、本当のところなど、わかるはずもないのだ。

これまでの経験則で「確からしい」という辺りを話しているだけなのだが、あやふやな物言いをしているとコンサルタント商売としてはなにかと差し障りもでてくるので(笑)、自信満々の断定調で話すことによって、聞き手のあなたのみならず語っている自分自身にさえも、それが真実と思い込ませているわけである。

「結果よければすべてよし」という方にとっては、こんなことは問題ではないかもしれない。

しかし、いまあなたがなかなか結果がでない状態にあるならば、あなたの転職活動がうまくいかない理由を、あなた以外の誰かが明快に解き明かすことなど本当にできるのかについて考えてみるのも、あながち無意味ではないと思う。



転職活動や再就職支援のホームページをいろいろと見て回るとわかるとおり、「あなたの転職活動がうまくいかない理由はこうだ」「こうすればうまくいく。キャリア×十年の就職カウンセラーがアドバイスします」という風に、あなたと一度もあったことのない、あなたの現在の状況など知る由もない「転職コンサルタント」を称する人たちが、そこかしこで自信満々に語っているのが目につく。

「これまで××名の求職者を見てきた経験から~」と、彼らは一様にその経験をアピールする。その力強い断定的な物言いに、これまで何度も失敗しているあなたはつい「そうかな?そうすればうまくいくのかな?」と、思うことだろう。



しかし、あなたもサラリーマンの経験がおありならわかるはずだ。

会社組織というものの本質は、「カオス(Chaos、混沌)」だ。

営利追求という単一の目的を持ち一致団結して向かっているはずなのに、構成分子のいろいろな人間がそれぞれの場面でばらばらな動きをして、最終的に予測不可能とも言える結果をもたらすこともある。

あなたもかつては、そのカオスのまっただ中にいた。右へ振られ左へ流され、言いたいことはぐっと胸にしまい、時には真実にも目をつぶり、自分をささやかにほめたり、あるいは自身を情けなく思ったり、そして同僚に悪態をついたりしながら、なんとか自分なりにやってきたはずである。

この後幸いにもあなたの転職・再就職が決まったならば、またまた別のカオスがあなたを待ち受けている…というわけだ。

カオスのカオスたるゆえんは、誰がどこからみても全体の様子がよくわからないという、その無秩序さにある。「秩序」に詳しいと自称する人間が、「無秩序」について的確に分析できるわけではないのだ。

あなたの転職や再就職がうまくいくかは、外部からはしょせんはカオスの観察のようなもの、要するにその成否や先行きも含めて誰もよくわからない…ということである。



しかし、もし思い通りにいかなかったとき、物事がうまくいかなかったときの「あなたの心の持ちようをどうするか」については、完全にあなたの守備範囲だ。

それだけはあなた自身の手で、コントロールすることができる。

では、どうコントロールするか。

自分のなかの不安や恐怖を追い払おうとするのはなく、「感情」という器のなかにすべて一緒くたに放り込み、喜びや幸福感などの「快」の感情と同居させたままゆるやかに放置しておくのがいいように思う。

心のなかのカオスを認め、ごくありふれた当たり前のこととしてその状態に慣れていくようにすることだ。

「快」の感情を最優先させようとして、無理に何かしらの秩序を心の中に打ち立てようとがんばらないことだ。



人生のさまざまな側面のなかから、幸福とか成功といった「快」だけを単体で取り出し、自分の中の位置づけとしても突出させようとする行為自体が、そもそも不自然ともいえる。

もしそれができるなら、感情のなかの成分の特定ができ、その自在な抽出も可能ということになる。

そしてそこには、ある種の秩序ができていることになる。

しかし、それはどだい無理なことだ。

したがって、あなたの中に純度100%の不安はないはずだし、純度100%の苦しみというものもまた、ないはずなのだ。

逆に現在の悩みがすべて解決したとしたって、純度100%の喜びも達成感も、あなたのもとに訪れることはない。

感情に成分があるとしたら、成分の配合割合が瞬間ごと絶えず変化しながら、共有的に混じり合い、あなたの心のなかをふわふわと漂っているのだろう。

純度100%の「快」の感情(すなわち、俗に言う『理想』だ)」を心のうちに求めることは、中年世代に入る頃ともなったなら、むしろ意識的に止めることだ。

あなたがたとえ転職に成功しても、おそらくはそれが手に入ることはない。

感情の成分配合が変わるだけ、そしてまた別の悩み・苦しみという成分が割合を変えて入ってくるだけで、それはいつまでも、終わりのないことだ。



「理想を持つな」とまでは言わないが、理想を持つとどうしても、現在と比較して判断しようとする心の動きがでてくることには、同意してもらえるだろう。

そうなると、そのギャップ・現実との落差に目がいってしまい、なんとかそれを解消しようという方向に、気持ちが動く。

何かに追い立てられている自分を感じる時が、一日の時間の多くを占めるようになってくる。

それがさらに高じると、現状を嫌い、憎み、やがてはその状況にある自分自身すら許せなくなって、自分にもつらくあたるようになる。



現状を超えて先を見すぎ、『理想』すなわち「100%の快」を一心に追い続けることは、実は精神衛生上もよくないわけだ。

現在の心のありようをそのまま受け入れて、不安と安心・喜びと悲しみがごちゃまぜになっている今の状態そのものに慣れること。

その状態に、自分自身を慣らしていく訓練をすること。

あなたがこれから転職なり再就職なりをして、会社組織というカオスにふたたび飛び込もうとしているならば、あなたのやっていることはつまり「あるカオスから別のカオスへの移動」ということになる。

今の自分が暮らしている日々だって、「日常」という名前のカオスである。

いずれにせよ我々は、カオスから逃れることはできない。

ならば、あなたがカオスをカオスであると認識して、それをごく自然に受け入れられる心構えを持つほうが、話が早い。




すべては不確実で混沌としていて、そのなかで我々は漠然とした不安感につつまれながらも、なんとか日々を送っている。

自分の思い通りにならないことを嘆くのではなく、今のこの状況もカオスの発現にすぎないと認めて、そのことをごく淡々と受け入れられるよう自分自身の感情を慣らしていくことだ。

「一寸先は闇」などとよく言うが、正しくは「一寸先も靄(モヤ)」じゃないかと、時々思う。

闇と光が漠と入り交じってほの明るいモヤ、一寸先もよく見えることのない状態が続く、視界がクリアに開けることなどない…というのが、我々の生きる日々の本当のところではないか。

だから「その状態が自分にとってごくナチュラルなもの、そのような不透明な日常の連続こそがごく普通の人生の有りよう」といった心持ちをつくることが、明日の一日を生き抜きやすい姿勢なのかな、と思う。

今この瞬間のカオスを愛することができるようになれば、人生がまばゆい輝きにつつまれる一瞬がこの先永遠にめぐってこないとしても、少なくとも薄ぼんやりとした光がいつも我々のそばには漂っているものと、信じている。








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