失業給付の受給中に知っておきたい支援制度(1)。
雇用保険(失業保険)がらみでおなじみの制度といえば、「教育訓練給付金」制度があるが(失業保険認定の要件となる「求職活動」を活用する。ご参照)、それ以外にもハローワークあるいは雇用保険関連で、いざというときのために知っておいたほうがよい制度がいくつかあるので、ここでご紹介しておく。
事を起こす前に、よく調べたか。でも書いたが、いくらよい制度が用意されていても、利用しようとする側がその制度の存在を知らなければ、そもそも話にならない。
ハローワークに通って雇用保険の失業給付を受けながら転職あるいは再就職活動をしている人たちが、失業給付が切れる前に次の職にスムーズに移ることができるなら、もちろんそれが一番よい。
しかし中高年層の就職が厳しい昨今はどうしてもうまくいかず、雇用保険が切れた後も貯金を取り崩しながらしばらく自力でがんばらなくてはならない人たちも多いことだろう。
それならまだよいほうで、実は退職時に会社が雇用保険への加入手続きをしていなかったことが判明し、転職活動の最初からすべて手弁当を強いられるといった深刻なケースすらある。
また中高年の転職マーケットのあまりに厳しい状況を見て、転職活動を行いつつも「これまでの経験を活かした独立ができないものか」と方向転換を考えはじめる人も、当然いるだろう。
なので、現在ハローワークで求職票と取り組んでいる人たちは、少なくともこういった制度の存在について知っておくべきだし、自分がなんとか条件にあてはまるようにできないか(あるいは条件のあてはまるうちに、チャレンジできないものか)どうか、転職・再就職活動を行いながら並行的に調べておくとよいだろう。
断っておくが、利用希望者みんながみんな、これらの制度を利用できるとは限らない。最初に述べる「公共職業訓練」などは、いまやその存在がかなり有名になってしまい、競争率も全体にかなり厳しくなっていると聞く。
また様子を伺っているうちに制度内容や応募要件が変更され、応募ができなくなったり申込資格から外れてしまったりする不運なケースもある。
自分の地域の状況はどうなっているのか、ハローワークなどで情報を仕入れた上で、自分も応募できると踏んだならせっかく国が予算をつけてくれているのだし、タイミングを逃さず申し込んでみるとよいだろう。
・「公共職業訓練(離職者訓練)」
「公共職業訓練」は、大きくわけて国が運営するものと、職業能力開発促進法に基づいて都道府県・市町村などが運営するものと二つある。
ここでは、国(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)が行う「離職者訓練」について説明する(在職者のためのものもあるが、ここでは割愛)。
一般的にはハローワークを通じて申込みを行い、同機構の訓練施設「職業能力開発促進センター(ポリテクセンターと呼ばれる。訓練期間は標準6ヶ月)」で設定された訓練コースを受ける。
ポリテクセンターは金属加工・電気設備・ビル管理・生産システム技術などが主な訓練内容となる。
なお2011年4月以降は、高齢・障害・求職者雇用支援機構が行なう「民間教育訓練機関等を活用した離職者訓練(委託訓練)」がなくなった。
「都道府県が実施する」委託訓練については、各都道府県のホームページか、最寄りのハローワークへ個別に照会する必要がある。
公共職業訓練コースの検索について(厚生労働省)
どのようなコースがあるかについては、「職業訓練コース情報(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)」を参照のこと。
受講料は無料(教材代などを除く)で、特殊な分野における実践的な知識と技術を習得できる。
この「公共職業訓練」は、「雇用保険の受給資格があるうちに受講すると、失業給付が職業訓練の終了時(最大2年)まで延長される」点がメリットとなる。
また自己都合で退職した場合で給付制限中であっても、訓練が始まれば失業給付を受け取ることができる。
さらにそれ以外にも、寄宿手当(家以外の場所から通う場合の手当)や通所手当(交通費)、受講手当(訓練受講日の手当)などの諸手当が支給される。
「離職者訓練」の申し込み条件としては、ハローワークに求職登録を行っており、現在仕事をしていないことが必要。また申し込みは必ずハローワークに対して行う。
ハローワークでは申込受付において、失業給付の支給残日数や年齢など、一定の要件・条件を設けているので注意したい。
また訓練コースによっては競争率が相当に厳しい場合があるし、申込がOKでもその後は通常、筆記試験や面接試験が行われる。
地域によって多少運用が異なる部分があるようなので、詳細はまず管轄地域のハローワークに問い合わせること。
・「求職者支援制度(2011年10月スタート)」
2009年7月から、国は期間限定の追加的な雇用対策としてこれまで「緊急人材育成支援事業」を実施していたが、今回の「求職者支援制度」はその制度実績を踏まえて、新たな法律として恒久化したもの。2011年10月1日から新制度がスタートしている。
あくまで「新たな制度」として実施されるものなので、本人の収入や世帯の金融資産などの受給要件が以前の緊急支援事業に比べて厳しくなっていることに注意が必要。
本人の収入が月8万円以下・世帯の収入が月25万円以下・世帯の金融資産が300万円以下・現在の住まい以外に保有不動産がない等々の支給要件を満たした求職者が、住所地のハローワークに申し込むことによって、所定の審査通過後に月10万円の給付金と交通費(通所手当)を、原則として最長1年間受けることができる。
求職者は、受講料が無料(テキスト代は自己負担)の「求職者支援訓練」を、3~6ヶ月間受講することになる。
求職者は訓練中および訓練終了後も、月1回ハローワークに出向いて就職相談・報告などを行なうことが義務づけられている。
これらを怠ったり、病気などを除いて一度でも訓練を欠席した場合は給付金が不支給となったり、過去にさかのぼっての返還命令が出される。
詳しくは、以下のURLで確認のこと:
・求職者支援制度のご案内(厚生労働省)
また、給付金だけで生活費が不足する場合は、労働金庫(ろうきん)の融資制度を利用して、月5万円(同居配偶者や父母がいる場合は月10万円)の貸付を別途受けることもできる(求職者支援資金融資)。
ただしこちらはあくまで「借入」となるため、ろうきんの所定の審査があることや、就職後も返済の免除措置がないことに注意。
・求職者支援資金融資制度(ろうきん)
(なお、以前にあった「就職安定資金融資」「訓練・生活支援資金融資」は、すでにハローワークの新規受付を終了しており利用不可。)
失業給付の受給中に知っておきたい支援制度(2)。に続きます。
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